日本におけるインターネットの歴史
日本でインターネットが使われ始めてから、もう30年以上が経ちました。 インターネットが一般の人々に広まり始めた最初のころは、速度が遅かったり、必要な情報を見つけるのが大変だったりして、便利とは言えないものでした。一部のマニア向けのツールという印象が強かったかもしれません。
しかし、この30年の間に、パソコンの普及や通信環境の進化、さらにはスマートフォンやWi-Fiの登場といった技術革新により、インターネットを取り巻く環境は大きく変化しました。今では、誰もが気軽に必要な情報を手に入れたり、便利なサービスを利用できるようになり、インターネットは私たちの生活に欠かせない存在となりました。
今回は、日本でのインターネットの利用開始から現在に至るまでの歴史を振り、インターネットがどのように進化してきたのか、そして私たちの暮らしをどのように変えてきたのかを紹介したいと思います。
~ 1995 インターネットの利用開始
インターネットとは、世界中のコンピュータなどをつなぐ通信ネットワークのことです。その起源は、アメリカ国防総省の支援で 1967 年に始まった ARPAnet の研究に遡ります。ARPAnetは1969年に米国内の4つの大学・研究機関を接続して運用が開始され、その後商用化が進みました。
日本では、1984 年に始まった JUNET(Japan University NETwork)がインターネットの始まりです。当初は国内の主要大学や研究機関をつなぐネットワークでしたが、徐々に広がり、普及の基盤となりました。
そして、1995年のWindows95の発売がパソコンの普及を加速させ、一般向けのインターネット利用を大きく後押ししました。
年 | 主な出来事 |
---|---|
1984 | JUNET の運用開始 |
1988 | NTT ISDN サービス開始(東京、名古屋、大阪の 3 地域にて) |
1993 | プロバイダーの IIJ がインターネット接続の商用サービスを開始 |
1995 | 「阪神淡路大震災」発生。 「Windows 95」が日本で発売を開始。 NTT 定額制サービス「テレホーダイ」を提供開始 |
ISDN
ISDN は Integrated Services Digital Network(統合サービスデジタルネットワーク)の略。NTT が提供するアナログ回線を利用したデジタル通信網。音声やデータ、映像などの通信サービスを 1 つの回線で同時に利用できるデジタル通信技術です。これにより、従来のアナログ回線よりも高速で高品質な通信が可能となりました。ISDN の最大伝送速度は 128kbps(64kbps 2 回線)。
テレホーダイ
テレホーダイは 23 時~翌朝 8 時の時間帯限定の定額料金サービスです。この時間帯にアクセスポイントへの接続が集中し、アクセスポイントへ接続しにくい状態が多く発生。特に学生などが夜間にインターネットを利用する際に重宝されました。
関連情報
- この時期のインターネット接続は電話回線を使った「ダイヤルアップ接続」と「ISDN」が主流。 ISDN はインターネットを使っている最中でも、電話をかけることが可能なので、非常に助かりました。
- 1980 年代後半~ 1990 年代前半まではポケベルが主なコミュニケーション手段でしたが、1995 年以降は携帯電話が普及し始め、ショートメールも使えるようになり、ポケットベルに取って代わるようになりました。
- 1994 年に携帯電話端末の買取制度がスタート。これにより事業間の競争から端末の低価格化が進み、携帯電話が急速に普及し始めた。
ポケベル(出典)NTT 技術史料館
1996 ~ 2000 年 インターネットの普及が始まる
テレホーダイや ADSL の登場で通信環境が向上。2000 年には国内でインターネットを利用する人が 37.1%に達した。この頃、メールでのコミュニケーションが普及し、会社や職場でのメールの利用も始まっています。
年 | 主な出来事 |
---|---|
1996 | 「Yahoo! JAPAN」がサービスを開始 |
1999 | ADSL が登場 NTT ドコモが「i モード」開始(携帯電話のインターネット接続サービス) 「2 ちゃんねる」開設 |
2000 | 「Google」が日本語の検索サービスを開始 「Amazon.co.jp」が日本でサービスを開始 |
関連情報
-
プロバイダーとはインターネットサービスプロバイダー(Internet Service Provider)の略称。
プロバイダーは、回線事業者が提供する回線を使ってインターネット接続を提供します。 -
2000 年問題
2000 年問題は、コンピュータシステムが西暦の下 2 桁だけを扱っていたため、日付を誤って 1900 年と解釈してしまう可能性があり、これが原因で様々なトラブルが起こると懸念されていたが、実際は大きなトラブルが生じませんでした。 -
i モードは携帯電話のインターネット接続サービス。 i モードは、NTT ドコモが提供した携帯電話向けのインターネット接続サービスで、メールやウェブ閲覧、ニュースの取得などが可能だった。
-
当時の Web デザインではブラウザでの表示崩れを防ぐために、テーブルレイアウトがよく使われていた。
2001 ~ 2005 インターネットの利用が一般化
低価格の ADSL の普及や光回線の登場。ネット利用が飛躍的に拡大。2005 年時点のインターネット利用率は 70.8%となる。
2005 年前後からブログや SNS、動画サイトが登場。利用者が情報を発信するようになり、情報やデータを双方向でやり取りできるようになった。なお、これらを総称して web2.0 と呼ばれる(ティム・オライリーが提唱)
web2.0 以前では、掲示板サイトにおいて、見る人が 95%、書く人は 5%程度でしたが、web2.0 以降は発信者の人が非常に増えるようになった。特にブログを通じた情報発信が流行し、ブログは 2005 年の新語・流行語大賞に選ばれた。
年 | 主な出来事 |
---|---|
2001 | NTT「フレッツ ADSL」、ソフトバンクの「Yahoo! BB」など ADSL 事業を開始 NTT ドコモ、世界初の 3G サービス「FOMA」開始 マイクロソフト、「Windows XP」日本語版リリース iPod の販売開始 |
2003 | 家庭向けの光回線が登場 「個人情報保護法」成立 |
2004 | 「mixi」がサービスを開始 マーク・ザッカーバーグ「The Facebook」をリリース Google の「Gmail」開始 |
2005 | アップル、国内にて「iTunes Music Store」サービス開始 Adobe、Macromedia を買収 |
関連情報
-
2002 年頃に多くのブログサービスが登場(はてなブログ、アメブロ、livedoor Blog、ココログ、エキサイト blog、JUGEM、Yahoo ブログなど)。ブログサイト構築ツールの Movable Type や WordPress なども登場しています。
-
FOMA は、NTT ドコモが提供していた第 3 世代移動通信サービス(3G)の名称です。FOMA は、従来の 2G サービスに比べて高速なデータ通信を実現し、動画や音楽のストリーミングが可能となりました。
-
2000 年に登場した Google の検索サービスは、他の検索エンジンに比べて検索結果の関連性が非常に高く、精度も優れており、多くのユーザーに支持されるようになった。
-
検索の精度が高まることで、必要な情報が見つかりやすくなり、インターネットの使い勝手が飛躍的に向上した。多くのサイトを知る機会が増えた
-
検索エンジンで上位に表示されるためには、ユーザーが検索するキーワードをサイト内に盛り込むこと、他サイトから自分の WEB サイトへのリンクを獲得することが主となっていたので、様々な SEO 対策を行われるようになりました。 ※SEO 対策とは、検索エンジンで自分のサイトを上位に表示させるための手法で、キーワードの選定や他サイトからのリンクを増やすことが含まれます
-
ソーシャルネットワークサービスの mixi が大人気。知人や友人とのやり取り以外に、いろんなコミュニティでのコミュニケーションも盛り上がっていた。mixi が 2006 年の新語・流行語大賞に選ばれる。
2006 ~ 2010 スマートフォン、タブレットが普及。SNS の利用が広まる。
2008 年に発売された Apple iPhone、2009 年、NTT ドコモが初の Android 搭載端末を発表し、スマートフォンの普及が始まった。 2010 年、日本におけるインターネット普及率は 78.2%。国内で初めて、モバイル端末からのインターネット利用者数がパソコンからの接続者数を超えた。
年 | 主な出来事 |
---|---|
2006 | Amazon Web Services (AWS)が公開 「ニコニコ動画」サービス開始 web2.0 が話題になる |
2007 | 「YouTube」が日本語版のサービスを開始 |
2008 | 「iPhone」が日本で発売を開始 「Facebook」、「Twitter」が日本語版サービスを開始 |
2009 | Google の OS「Android」が発売開始 |
関連情報
- 外では 3G 回線、室内では無線 LAN を使い、スマホのインターネット利用が快適になる。スマホからの SNS への投稿も簡単にできるようになった。
- インターネット上で展開される 3D 仮想世界サービス「セカンドライフ」が話題になる。セカンドライフ内で使用される仮想通貨があり、様々な経済活動が行われていた。
2011 ~ 2015 スマホからのインターネット利用が一般的になる
2011 年から 2015 年にかけて、国内のスマートフォン世帯保有率は 29.3%から 72%に急増しました。この時期にはスマートフォン向けアプリが普及し、使い勝手が飛躍的に向上。スマートフォンの普及に伴い、大画面化や高速通信環境の整備が進んだことで、YouTube をはじめとする動画コンテンツの視聴が一般化しました。また、LINE やメルカリ、Instagram など、スマートフォンを主軸としたサービスが次々と登場しています。
一方で、Google がウェブブラウザや検索エンジン市場をリードする中、検索結果の上位表示には、Google の指標に基づいた良質な Web ページやレスポンシブ対応が求められるようになり、インターネット利用のスタイルも大きく変化しました。
年 | 主な出来事 |
---|---|
2011 | 「iPad」が日本で発売を開始 「LINE」がサービスを開始 東日本大震災 |
2012 | Facebook が NSDAQ に株式上場。全世界でのユーザー数が 9 億人を超える。 日本国内で初のクラウドファンディングサービスが登場 |
2013 | 「メルカリ」がサービスを開始 |
2014 | 「Instagram」の日本語版サービスが開始 |
2015 | Google が検索アルゴリズムに『モバイルフレンドリー』を導入 ドコモ、KDDI、ソフトバンクが 4G サービスを開始 |
関連情報
- 2015 年にフレッツ光の卸売販売(フレッツ光の卸販売による光回線の再販)が開始され、光回線サービスの選択肢が大幅に増え、ADSL から光回線への移行が進むことになった。
- LINE が手ごろなコミュニケーションツールとして一気に普及。
- ビッグデータの活用が始まる。※ビッグデータ:膨大なデータを収集・分析して意思決定やマーケティングに活用する取り組みや概念です。
- クラウドファンディングがインターネットを使った資金調達手段として注目を集め、2011 年に日本で CAMPFIRE や READYFOR などのサービスが始まりました。
- クラウドワークス、ランサーズなどインターネットを介して業務を依頼するクラウドソーシングのサービスが普及
2016 ~ 2020 ものとインターネットがつながり、Iot が注目される
2016 年には、日本におけるインターネットの人口普及率が 83.5%に達しました。端末別で見ると「パソコン」が 58.6%、次いで「スマートフォン」が 57.9%とほぼ横並びになりました。
また IoT の技術開発が進み、家電や自動車がネットワークにつながる可能性が広がり、データの収集と活用が大規模に進展しました。コンピュータ上の Web デザインだけでなく、システムやサービスも含めて、CX(顧客体験)や UX/UI(ユーザー体験およびインターフェースデザイン)を重視する企業が増えました。
年 | 主な出来事 |
---|---|
2017 | TikTok がサービスを開始 |
2018 | PayPay がサービスを開始 スマートスピーカーが販売される(amazon,Google,LINE など) |
2019 | 日本のインターネット広告費がテレビ広告費を上回る サブスクの普及(サブスクが 2019 年の流行語大賞の候補になる) |
2020 | 日本、「新型コロナウイルス」発生 コロナ禍によるリモート勤務のため、Zoom、Microsoft Teams、Google Meet など Web会議システムが急速に普及 ドコモ、KDDI、ソフトバンクが 5G サービスを開始 |
関連情報
- 様々な産業の高度化を支える基盤として Iot(Internet of Things)が注目される
- IoT とは、家電や自動車などのモノがインターネットを通じてデータを交換する技術です。例えば、スマート冷蔵庫や自動運転車などが IoT 技術を活用しています。
- paypay などの決済インフラの普及
- ビットコインなどの仮想通貨は、ブロックチェーンなどの技術面で注目された一方、投機性の高さが話題となりました。
- 2020 年頃は、テレビでの Youtube 視聴が増加し、幅広い年代で Youtube が見られるようになりました。
- 2015 年頃から、YouTube や Twitter などで注目を集めることを目的とした過激な行為が目立つようになりました。特に、炎上を狙って意図的に過激な発言や行動をするケースが増えています。
2021 ~ 2024 ビジネス、生活の場で AI 等の活用が拡充
ChatGPT などの AI サービスが登場し、ビジネス、生活の場での AI の活用が広まる
年 | 主な出来事 |
---|---|
2022 | Open AI が開発した ChatGPT が登場 |
関連情報
- メタバースにより仮想空間への注目が集まる
- フェイクニュースがソーシャルメディアを中心に氾濫し始める
最後に
この記事は、もともと私が中学 3 年生の子供にインターネットの歴史を教えるために作成しました。 現在のインターネットがどのような経緯で進化し、現代の姿に至ったのかを知る機会を提供したいという思いで作成したものです。
私自身、長年インターネットに関わる仕事をしてきた中で、その発展や出来事が私たちの暮らしにどれほど大きな影響を与えてきたのかを改めて実感しました。
一方で、インターネットは便利さをもたらしてくれる反面、弊害も無視できません。特に SNS が社会に与える影響は非常に大きく、さまざまな問題を引き起こしています。これからは、SNS の使い方やインターネット全体の在り方について、考え直すべき時期に差し掛かっているのではないでしょうか。