突然、会社のメールが「送れない」「届かない」といったトラブルが起きることがあります。 その原因のひとつが、メールサーバーのIPアドレスがブラックリストに登録されてしまったことです。

※ブラックリスト登録されても受信には影響しません。 送信メールについても、全てがブロックされるわけではなく、一部の相手にだけ届かないというケースも多いです。

ブラックリストとは、スパムメールの送信元など「信頼できない」と判断されたメールサーバーの一覧のこと。 一度登録されてしまうと、あなたの会社から送信したメールが相手側でブロックされ、届かなくなる場合があります。

とはいえ、慌てる必要はありません。 この記事では、ブラックリスト登録時にメールを送るために取るべき対処法を、次の2つの視点からわかりやすく解説します。

  • 短期的な応急対応(すぐにメールを送るための方法)
  • 恒久的な対策(再発を防ぐための中長期対応)

なお、実際の対応を始める前に、まずはブラックリスト登録の原因を特定し、解除申請を行っておくことが重要です。 そのうえで、以下の方法を順に検討しましょう。

短期的な応急対応

以下の方法は、比較的すぐに実施できるので、すぐに試してみてください。 1日あたりの送信件数が多い(100件以上)場合は、安定した外部SMTPサービスを利用する方法(②)をおすすめします。

① Gmail経由で送る(もっとも簡単で安全)

「自社ドメインのメールアドレスを使いながら、Gmailの送信サーバーを利用する」方法です。 一見ややこしそうに思えますが、設定さえすればとても安定して使えます。

設定手順
  1. Gmailを開く → 右上の歯車「設定」→「すべての設定を表示」
  2. 「アカウントとインポート」タブ → 「名前」欄の「別のメールアドレスを追加」をクリック
  3. 「名前」「メールアドレス(例:[email protected])」を入力
  4. 「SMTP サーバー」に `smtp.gmail.com` を指定
    • ポート:587
    • ユーザー名:あなたのGmailアドレス
    • パスワード:アプリパスワード(2段階認証が必要)
  5. Gmailから確認コードが届く → 承認すると完了。

メリット

  • Gmailの送信IPを使うため、ブラックリストの影響を受けない。
  • Gmailの配信成功率は非常に高い。

注意点

  • SPF / DKIM設定をGmail仕様に合わせるとさらに安全
  • 返信はGmail経由で受ける形になります。

② 外部SMTPサービスを利用(例:SendGrid)

もう一つの方法は、外部の送信専用サーバー(SMTPサービス)を使う方法です。 代表的なサービスに「SendGrid」があります。無料プランでも1日100通まで送信できます。

設定の流れ

  1. SendGrid でアカウント登録
  2. ドメイン認証(DNSにTXTレコードを追加)
  3. メールソフト(ThunderbirdやOutlookなど)でSMTPサーバーに「smtp.sendgrid.net」を設定
  4. 認証情報をSendGridのAPIキーに変更して送信。

メリット

  • 自社とは別の送信IPを使うため、ブラックリストの影響を受けない
  • GmailやMicrosoft 365などにもしっかり届く
  • サーバーのブラックリストとは無関係。

注意点

  • 設定に少し時間がかかる(30〜60分程度)。
  • HTMLメールや一括送信には有料プランが必要。

③ 一時的に別ドメインを使う

別サーバーで運用しているドメインがある場合、一時的にそちらのメールアドレスを使用する方法もあります。

例:
通常 → [email protected]
一時 → [email protected](別サーバーで運用)

注意点

メール送信時には、「現在メールサーバーの一部で障害があり、一時的に別ドメインからご連絡しています」と添えておくと安心です。

④ Gmailを直接使う(応急対応として)

①の「Gmail経由で送信」ではなく、単純にGmailのアカウントから直接送信する方法です。 一時的な連絡手段として有効です。

会社用として新たにGmailアカウントを作成する際は、以下のようにわかりやすい名前にするのがおすすめです。

例:

注意点

メール送信時には、「現在メールサーバーの一部に障害があり、一時的にGmailからご連絡しています」と明記しましょう。

恒久的な対策(中長期的な対応)

「ブラックリスト登録」が何度も起きるようなら、根本的な対策が必要です。 以下の2つが現実的で効果の高い方法です。

①クラウドメールに切り替える(Google Workspace / Microsoft 365)

一番確実な方法は、メールサーバーをクラウドサービスに移行することです。

  • 根本的な「共用IPリスク」から抜け出せます。
  • ブラックリストやメール遅延問題がほぼ解消します。
  • 現在のドメイン(例:@yourcompany.jp)のまま利用できる。

注意点

  • 1アカウントごとに月額料金がかかるため、人数が多いとコストが高くなる可能性があります。

② メールだけ別サーバーに移す(例:さくらのメールボックス)

Webサイトはそのままで、メールだけ別サーバーで運用する方法もあります。

  • 月100円台〜利用可能(例:さくらのメールボックス)
  • MXレコードを切り替えるだけで導入できる

注意点

同じ送信IP(特に共用IP)を使う他ユーザーの影響を受ける可能性があるので、ブラックリスト登録のリスクを「完全にゼロ」にすることはできません。

最後に

一般的に、ブラックリストの登録が解除されるまでには、通常5~7日ほどかかります。 一時的な応急処置で問題が解決すればよいのですが、それだけでは対応しきれない場合もあります。 その際は、根本的な解決につながる恒久的な対策も検討してください。 また、同じトラブルを繰り返さないように「再発防止の仕組みづくり」を考えておくことも大切です。